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書評 -「UNIXという考え方」について - その5

  

  前回に引き続きMike Gancarz著の「UNIXという考え方」について、書評を書いていければと思う。

6章

過度の対話的インタフェースを避ける

6章では主に拘束的なインターフェース、プログラム、コマンドパーサーを避けなければならない理由について書かれている。

ソフトウェア設計者にとってのジレンマ

小さなプログラムやモジュールを数多く持つことで環境への適応能力は最大となるが、取り扱いも煩雑になる。

UNIXはユーザとモジュール間に広がる溝を少しずつ小さな塊または層にして減らしていこうとすることで解決を図る。

拘束的ユーザーインターフェース

このアプローチの欠点は多くのアプリケーションが稼働するシステムだったり、あるコマンドを実行していてもそれを終わらせるまでは他のことが出来ない。

何故、避ける必要があるの?

UNIXユーザーにとってコマンド同士を対話させる必要がある。UNIX環境ではどのコマンドも単独では存在できない。様々な時点でコマンド同士が対話する前提だから。

拘束的プログラム

ユーザーを人間と想定している為、人間の限界によって動作を制限されるようなシステムは、潜在能力をフルに発揮できない。

何故、避ける必要があるの?

複雑になった拘束的プログラムは多機能主義と相まってますます大量のシステムリソースを必要とする。

ユーザーが人間であることを想定している為、他のプログラムとのインターフェースは苦手。

拘束的コマンドパーサー

あらゆる可能性に対処しようとしてコマンドパーサーが肥大化し複雑になる。UNIXプログラマはユーザーインターフェースへの対処を避けて通る。典型的なUNIXアプリケーションにはコマンドパーサーがない。

その代わり、コマンド起動時にユーザがコマンドラインに動作パラメータも入力することが前提になっている。

何故、避ける必要があるの?

ソフトウェアのテコの効果を利用出来ず、他のプログラムとの対話を妨げるので、その効果をコンピュータ世界に広めることが出来ない。その為やがて取り残されて魅力を失っていく。

すべてのプログラムをフィルタにする

世界は、人間が作り出したデータで溢れている。コンピュータが発明されていなくても、データは存在している。

コンピュータは、データの収集とフィルタリングを効率よく行えるようにする道具に過ぎない。



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以上、7章へつづく。

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